ep14 公開 2026-09-18 AI×内部統制

AIに「内部統制は有効でない」を書かせました。225字の先は、誰が書きますか

本文のAI出力例(パターンA〜C)は、実在しない会社(株式会社サンプル製作所)を設定した合成データに対する2026年8月26日の各1回の生成結果です。EDINETの実測値は合成ではありません。

【問い】内部統制報告書の「評価結果」は、ほとんどの会社で数十字の定型の一行に収まります。では、その一行が「有効でない」に変わる年、そこに何を、どれだけ書くことになるのか。

【この記事で答えること】AIに「有効でない」の評価結果を3パターン書かせ、EDINETの内部統制報告書11,621件の実測と様式の条文に照らして、どこが当たり、どこが壊れたかを出します。

【答え】通常のケースでAIが書いた本文は225字(空白除く)で、体裁は整っていました。ただ、実測と様式に照らすと5か所で壊れていました。「有効」側の11,485件が2,034通りの定型に収束するのに対し、「有効でない」の125件=1.1%125通り——完全一致の重複がゼロ。本文は中央1,415字(空白も除くと1,397字)で、全件の中央63〜64字とは桁が違います(データ基準日 2026-08-16)。AIが書けたのは125件に共通する「枠」だけでした。枠の中身はその会社の記録にしかなく、それを埋めるのは調査記録を持つ人の側です。そして基準と実施基準を合わせて読むと、「有効でない」とは「不備があった」ではなく、「期末日までに直り切らなかった」という状態でした。

この連載は、AIに会計・開示の実務を実際にやらせ、その出力がどこで壊れたかをEDINETの実測に照らして確かめる記録です。日本企業の生成AIの活用・推進度は87%。一方で「期待を大きく上回る効果」を出している企業は9%で、調査した6カ国のうち最も低い数字でした(PwC「生成AIに関する実態調査2026春 6カ国比較」・日本の回答932名=売上高500億円以上の企業の課長職以上・2026年2月実施)。87%が入れて、期待を大きく上回ったのは9%——その差がどこで生まれるのかを、1本につき1件、実物で示していきます。

第1回に内部統制報告書を置くのは、定型が崩れる瞬間だけは別だからです。ほとんどの会社で「評価結果」の本文は数十字の定型に収まり、日常の効率化には直結しません。それでも「有効である」の一行が「有効でない」に変わったとき、会社が何をどれだけ書くことになるのかは、実測で確定できます。「定型文ならAIが得意」という直感が、そこでどう外れるかも、並べて確かめられます。


AIにやらせてみた

⚠️ 使用AI:Claude(Anthropic)。実行日 2026-08-26。この節はこの日時点の各1回の生成結果で、他のモデル・他の日付での再現性は確認していません。

使ったプロンプト(3パターン共通の前置き)

あなたは日本の上場会社の経理部長です。以下は合成データです。内部統制報告書の
「3【評価結果に関する事項】」の本文だけを書いてください。
【会社】株式会社サンプル製作所(3月決算・連結子会社3社・合成)
【事実】当事業年度において、連結子会社1社で売上の期間帰属に関する誤りが発見され、
開示すべき重要な不備に該当すると判断した。

【AIの出力例】パターンA(通常のケース・225字/空白除く)

> 上記の評価の結果、当事業年度末日時点において、当社の財務報告に係る内部統制には開示すべき重要な不備が存在しており、財務報告に係る内部統制は有効でないと判断いたしました。当該開示すべき重要な不備は、連結子会社における売上の期間帰属に関するものであり、財務報告に重要な影響を及ぼす可能性が高いと判断したことによるものであります。当社は、当該開示すべき重要な不備を是正するため、今後、子会社に対する管理体制の強化及び決算プロセスの見直しを行ってまいります。

⚠️ 合成データに基づく生成例です。実在の会社の記載ではありません。

一見それらしく見えます。しかし採否は不採用——後述の実測と様式に照らすと、5か所で壊れています。

⭐ どこで壊れたか

1. 「期末日までに是正されなかった理由」が丸ごと無い。 様式(後述の⑻c)は「有効でない」と書くとき、不備の内容に加えてそれが事業年度の末日までに是正されなかった理由を求めます。「今後〜行ってまいります」は将来の意思表明であって、なぜ期末日までに直らなかったのかという過去の事実の説明ではありません。⚠️ ただし「今後〜」を消せという話ではありません。ガイドラインは、⑻cを書く際に是正の方針・計画があれば「その内容を併せて記載することができる」としています。足りないのは③であって、将来の記述が余計なのではない。実測では125件中110件が、この「是正が期末日までに完了しなかった旨」に相当する記述を持ちます(⚠️後述のとおりパターン一致による件数)。

出典:金融庁「内部統制府令ガイドライン」令和5年6月・4-5(拘束力=ガイドライン)

2. 出だしが「有効である」定型の語尾差し替えになっている。 この書き出しは、有効側11,485件で最も多いテンプレの形そのものです。しかし実測の125件は125通りすべて異なり、置換で書けるものは1件もありませんでした。

3. 分量が違う。 225字に対し、実測125件の中央は1,415字。第1四分位でも959字あり、125件中123件が200字を超えます。

4. 落ちた要素が、実測に繰り返し現れる要素と対応する。 発見の端緒(「判明」92件)、調査委員会の関与(54件)、過年度訂正との関係(57件)——実際の125件に現れる要素が、生成文には1つもありません。

5. 欄の割り当てを検討しない。 期末日後に実施した是正措置は付記事項(⑼b)に書く建て付けなのに、全部を項目3へ流し込みます。

【AIの出力例】パターンB(例外:評価範囲外の子会社で発見)

同じ不備が「評価範囲に含めていなかった子会社」で見つかった、という設定に変えると、出力は「当該子会社は評価範囲に含まれていないため、当事業年度の評価結果に影響を及ぼすものではありません」と書き、結論を「有効」に反転させました

実施基準には、こうあります。

> 評価範囲外の事業拠点又は業務プロセスにおいて開示すべき重要な不備が識別された場合には、当該事業拠点又は業務プロセスについては、少なくとも当該開示すべき重要な不備が識別された時点を含む会計期間の評価範囲に含めることが適切である。

出典:企業会計審議会「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに実施基準」実施基準 Ⅱ.2(2)(評価の範囲の決定)。2023年4月7日改訂・2024年4月1日以後開始する事業年度から適用

「範囲外だから関係ない」と整理してしまうのは、この節で最も危険な壊れ方です。

【AIの出力例】パターンC(資料不足:不備の詳細が調査中)

不備の詳細を渡さずに書かせると、出力は2通りに割れました。(i) 発生部署・金額・原因を創作して埋める。(ii) 「評価結果を表明できない」へ逃げる。

(ii)は誤用です。様式(記載上の注意⑻d)の「表明できない」は重要な評価手続が実施できなかった場合の結論であって、不備の内容が未確定な場合の逃げ場ではありません。実測でも7件/11,621件(0.06%)しかない、例外中の例外です。

人が直すべきこと


【確認できる事実】実際はどうなっているか

何を数えたか

結論の分布:「有効でない」は125件=1.1%

判定件数割合(分母11,621件)
有効11,48598.8%
有効でない1251.1%
評価結果を表明できない70.06%
(機械判定を確定できなかったもの)40.03%

出所:内部統制報告書11,621件のXBRL全件抽出(筆者集計・データ基準日2026-08-16)

⭐ この数え方が妥当か——外部の独立調査と突き合わせる

自分で数えた数字は、自分で正しいと言っても意味がありません。別の主体が別の方法で数えた結果と並べます。

実務誌『週刊 経営財務』が、2024年4月期〜2025年3月期決算の上場会社を対象に同じ論点を調査しています。

そこでは 43社(43件) が「開示すべき重要な不備があり、内部統制は有効でない」旨を開示した、とされています

(同誌が2025年11月10日時点で調査。訂正内部統制報告書による開示は除く)。

出典:週刊 経営財務「開示すべき重要な不備(2024年4月期〜2025年3月期)」(2026年3月11日更新)

手元の実測と並べると、こうなります。

経営財務の調査本稿の実測
母集団2024年4月期〜2025年3月期決算の上場会社内部統制報告書11,621件(XBRLあり・2023-08-17〜2026-08-16提出)
単位会社ベース書類ベース(ユニーク提出者は114社)
期間1年約3年
訂正内統対象外対象外
結果43社125件/114社
年あたりの目安43社約42件/約38社

【観察】年あたりの水準が近い(43社 対 約38〜42)。

⚠️ ここで「だから正しい」と言い切りません。 理由は3つあります。

1. 母集団が違います。あちらは決算期で切った上場会社、こちらはXBRLを取得できた内部統制報告書です。

2. 単位が違います。会社ベースと書類ベースを直接は比べられません。

3. ⚠️ 3年分を3で割るのは、年次のばらつきを均しています。しかも本稿のコーパスは期間の両端が部分的です

(2023年8月開始・2026年8月終了)。端の年は丸ごと入っていません。

【推察】それでも、独立に数えた2つが同じ桁・近い水準に来たことは、少なくとも

「本稿の抽出条件が、実務で数えられているものと大きくずれてはいない」ことを示します。

⭐ 数字を出す側として言えるのはここまでで、それ以上を言わないこと自体が、数え方の作法だと考えています。

⚠️ なお、あちらの調査には不備の内容の分類(会計処理等の誤り等が最多)も載っていますが、

本稿の類型とは分類の切り口が異なるため、対応づけはしていません。

文字数:中央63〜64字と、中央1,415字

「評価結果」項の本文(HTMLタグ除去後)の文字数です。空白を除くかどうかで数字が動くため、両方を示します。

n中央値(タグ除去のみ/空白も除去)
全件11,62164/63
有効11,48563/62(最小35〜最大2,237・タグ除去のみ)
有効でない1251,415/1,397(最小123〜最大15,545・タグ除去のみ)
表明できない73,150(n=7の参考値)

出所:同上

⭐ 中央値の比は、どちらの正規化でもおおむね22倍になります。ただしこれは精密値ではなく「桁が違う」という話として読んでください。正規化の取り方で数字そのものは動きます。

分布はほぼ重ならない

本文の長さ有効(n=11,485)有効でない(n=125)
100字超98件(0.85%)125件(全件)
200字超19件(0.17%)123件
500字超2件(0.02%)121件

出所:同上

有効側は50〜70字に9,232件(80.4%)、40〜80字まで広げると95.7%が収まります。後述の「今日の一歩」——自社は60字前後か——の裏づけはここです。

定型の正体:11,485件で2,034通り

有効11,485件の本文を空白除去して完全一致で数えると、2,034通りしかありません。上位5通りだけで4,859件=42.3%。最頻の文は1,221件(10.6%)、次点は1,143件(10.0%)で、両者は同じ一文の語尾違い(「判断いたしました/判断しました/判断した」)でした。

対して「有効でない」125件は125通り。完全一致の重複はゼロです。

定型とは「みんなが似たことを書く」ではなく、文字どおり同じ文を書くことでした。そして結論が変わった瞬間、共有できる文は1つも無くなります。

125件には、何が書かれているか

書かれている要素有効でない(125件中)有効(11,485件中)
「開示すべき重要な不備」の語124件14件(0.1%)
不備を認識・識別した旨116件0件
財務報告への影響への言及118件2件
是正・改善への言及122件3件
是正が期末日までに完了しなかった旨110件—(測っていません)
「判明」した旨(期末後の発覚)92件1件
過年度・訂正報告書・遡及への言及57件0件
調査委員会(第三者・特別・社内)54件2件
「不正」の語42件0件
結論文以外に100字以上の説明123件—(測っていません)

出所:同上(両群に同じパターンを当てた語・述語の機械判定。個々の文脈までは読んでいません)

⚠️ この表の件数は、当てたパターンの取り方で動きます。単語一致(「開示すべき重要な不備」など)は安定しますが、意味で数えている行(「是正が期末日までに完了しなかった旨」など)は書きぶりの揺れを拾いきれず、十数件の幅が出ます。ほぼ全件が書く要素と、半数前後しか書かない要素があるという桁と順位だけを読んでください。

付記事項(項目4)の使われ方

中央文字数「該当事項なし」系是正・改善の語
有効(11,485件)18字11,027件(96.0%)65件(0.6%)
有効でない(125件)18字96件24件

出所:同上

【推察】「有効でない」と書いた125件のうち96件は、付記事項を「該当事項なし」系のままにしています。一方で是正への言及は125件中122件——是正の話は付記事項ではなく、評価結果(項目3)の中で説明し切る書き方が多数派ではないか、というのが解釈です。ここは観察ではなく推察として読んでください。

制度は、何を書けと言っているのか

この分量差は、様式から逆算すると説明がつきます。

内部統制府令の第一号様式・記載上の注意⑻c(拘束力=内閣府令)は、「有効でない」と書くときの記載をこう定めています。

> 開示すべき重要な不備があり、財務報告に係る内部統制は有効でない旨並びにその開示すべき重要な不備の内容及びそれが事業年度の末日までに是正されなかった理由

出典:金融庁「第一号様式(内部統制報告書)」(内国会社の様式の根拠は内部統制府令第4条第1項第1号)。同じ文言は金融庁「内部統制府令ガイドライン」(令和5年6月)4-5でも「第1号様式記載上の注意(8)のc」として引かれています

つまり要素は3つ。①有効でない旨、②不備の内容、③期末日までに是正されなかった理由。①は一行で書けますが、②と③はその会社にしか書けない事実の説明です。125件が125通りになるのは、様式からの当然の帰結でした。

さらに、企業会計審議会の基準(内部統制府令第1条第5項が「一般に公正妥当と認められる基準」として参照するもので、単なる参考文書ではありません)には、こうあります。

出典:企業会計審議会「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに実施基準」(2023年4月7日改訂。2024年4月1日以後開始する事業年度から適用)

⭐ この2つを合わせると、「有効でない」とは「不備があった」ではなく、「期末日までに直り切らなかった」という状態です。実測で125件の大半が「是正が期末日までに完了しなかった旨」に相当する記述を持つのは、様式の③と整合的です。⚠️ ただしこれは語・述語の一致で数えた結果であって、125件が③を満たしていると判定したものではありません(充足の判定は本稿では行っていません)。

2023年改正(2024年4月1日施行)では、この周辺がさらに手厚くなりました。訂正内部統制報告書について、元の報告書が「有効」で訂正報告書が「有効でない」となる場合の訂正の理由として、不備の内容・是正措置と是正の状況・評価結果を訂正した経緯・元の報告書に不備の記載がない理由の4つを書く規定が置かれています(内部統制府令第11条の2第3項)。一度崩れた結論は、そのあとも説明が続く建て付けです。

出典:e-Gov法令検索「財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令」(平成19年内閣府令第62号)第11条の2第3項。2026-08-26時点の現行有効版で確認(拘束力=内閣府令)

⚠️ 前年度に不備を書いた場合の是正状況が付記事項(⑼c)に加わったとされる点は、新旧対照表による理解で、改正後の様式全文では確認できていません。ただし実測とは整合します——付記事項に「前事業年度/前連結会計年度/前年度」と「是正/改善」がともに現れる書類は、提出2023年0件/583件・2024年0件/3,925件に対し、2025年39件/3,906件・2026年21件/3,207件(データ基準日2026-08-16・提出年ベース)。適用開始の翌年から立ち上がる形です。

AIの出力を、この分布に照らす

当たった所:結論の一文の形。「開示すべき重要な不備」の語(125件中124件が使う)。財務報告への影響への言及(118件)。語彙のレベルでは、生成文は実測とずれていません。

外れた所:様式③の「是正されなかった理由」(実測110件が持つ)が無い。発見の端緒・調査・過年度との関係(92件・54件・57件)が無い。分量(123件が200字超)が無い。そして125通りの個別性——どの実在の書類とも一致しない文を書くことになるのに、定型の語尾差し替えで済ませてしまう。

AIが書けたのは、125件に共通する「枠」だけです。枠の中身は、その会社の記録にしかありません。

⚠️ この分布は判断材料であって基準ではありません。他社が多いから適切とは言えず、どこまで書くかは会社が決めることです。


AIに任せる工程/人が判断する工程

工程任せられるか
⑻cの3要素のチェックリスト化・記載漏れの検知⭕ 任せられる
時系列の整理(発見→報告→措置の並べ直し)⭕ 任せられる(材料は人が渡す)
定型から外れた記載の検知(グループ会社の報告書の点検)⭕ 任せられる
不備該当性・「開示すべき重要な不備」かどうかの判断❌ 人が決める(内部統制の評価は経営者が行うもの)
是正が完了したかどうかの判断❌ 人が決める
評価範囲の見直し(範囲外で不備が見つかった場合)❌ 人が決める
発見日・報告先・措置の記録そのもの❌ 人が残す(AIの知らない事実)

⭐ 検知の側で1つ、実測から言えることがあります。「開示すべき重要な不備」という語の有無だけで報告書を機械判定すると、項目3に語を含む144件のうち、実際の結論が「有効」のもの14件・「表明できない」もの5件・判定不能1件——計20件(13.9%)が誤検出になります。有効側にも「開示すべき重要な不備は認められなかった」という否定形で同じ語が現れるからです。語ではなく述語(存在している/認められなかった)で見る。AIに検知を任せるときの設計は、ここで決まります。

AIを入れると、AI自体が統制対象になります

「有効でない」に関わる情報は、開示前の段階では未公表の重要情報です。調査中の不備の内容を外部のAIサービスへ渡してよいか、渡すならどの範囲か——ここは効率化の前に決める統制です。

加えて、生成に使った指示文・モデル・出力の記録を残すこと。パターンCで見たとおり、AIは資料が足りないとき、創作で埋めることがあります。出力を開示のドラフトに使うなら、どの記述が記録由来でどれが生成かを、後から辿れる必要があります。


⚠️ この数字を、こう読まないでほしい

「1.1%」は、多い・少ないを論じるための数字ではありません。 125件/11,621件は観察された分布であって、自社の評価結果を先取りするものでも、「有効でない」と書いた会社を評価するものでもありません。個々の125件は、様式が求める説明をそれぞれの事実で書いた、というだけのことです。

「中央1,415字」は、目標字数ではありません。 求められているのは字数ではなく⑻cの3要素です。字数は、説明すべき事実の量の結果にすぎません。

そして、AIが225字の評価結果を出力できたことは、その工程が統制されている証拠ではありません。出力は定型の写像であって、自社の不備の事実を1つも含んでいないからです。


【私の提案】平時に、3要素が埋まる記録を作っておく

対象:上場会社・上場準備会社の管理部(内部統制評価の事務局)

条件:自社のJ-SOX評価のスケジュールと体制が既にあること

いつ何をするか
1日目自社の直近の内部統制報告書「評価結果」項の文字数を数える(定型60字前後かを確認する)
7日目⑻cの3要素(不備の内容/有効でない旨/期末日までに是正されなかった理由)を欄にした不備記録の様式を作る。下書きはAIに任せてよい
14日目評価計画に是正のための期間が確保されているかを確認する(実施基準 II.3(5)①)
30日目評価範囲外で不備が見つかった場合の扱い(当該時点を含む会計期間を評価範囲に含める検討)を評価計画に明記する

承認:不備記録の様式と評価計画の改訂は、内部統制評価の責任者(管理部長・CFO等)

成果物:不備記録の様式(発見日・発見の端緒・報告先・実施した措置・完了/未完了の理由が日付つきで残るもの)/評価計画の改訂版

⚠️ 法令上の義務と、私が勧める手順は別物です。上記は義務ではありません。監査上の対応は監査人にご確認ください。


経営に効く一節

この記事の数字が動かすのは、リスクです。

「有効でない」と書いた会社の本文は、中央1,415字でした——それも、どの他社とも一致しない、自社の事実だけで埋める字数です。他社がそれを書いたという事実は観察であって、自社が書けることの保証ではありません。

経営が平時に問えるのは、これだけです。不備が見つかった日から期末日までに何が起きたかを、日付つきで書き起こせる記録が、いまあるか。 あるなら、この数字は関係のない話です。無いなら、それは文章力の問題ではなく、記録の問題です。


人が判断・承認する箇所


今日の一歩

EDINETで自社の直近の内部統制報告書を開き、「評価結果」項の文字数を数えてください。自社の公開書類だけで、15分で終わります。

60字前後なら、「有効」と結論した11,485件の分布のいちばん厚いところ——50〜70字の9,232件(有効11,485件中80.4%)のあたりにいます。それを確かめるだけで、この記事の分布が自社の物差しになります。


次に必要になる仕組み

定型の一行の下に、不備を説明できる記録を平時から積んでおく——それは報告書の書き方の話ではなく、内部統制の整備・運用そのものです。評価体制の設計、不備対応のプロセス、評価計画の組み立ては、下記で支援しています。


参照した資料と、確認できていないこと

PwC Japanグループ「生成AIに関する実態調査2026春 6カ国比較」(冒頭の導入でのみ使用。EDINET実測とは独立の出典)

分かること:日本の回答者932名(売上高500億円以上の企業の課長職以上・2026年2月12日〜19日実施)における生成AIの活用・推進度87%、「期待を大きく上回る効果」を創出している企業の割合9%(6カ国中最低)。公式ページで原文を確認(確認日2026-09-07・https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/generative-ai-survey2026.html)。

EDINET 内部統制報告書(通常・書類種別235)11,621件(XBRLあり・2023-08-17〜2026-08-16提出)

分かること:「評価結果」「付記事項」の本文、結論の判定、文字数、語の出現。

分からないこと:⚠️ 手元の索引では事業年度の開始日・終了日の列が全件空のため、2023年改正後の様式が適用された報告書だけを層別できませんでした。本稿の125件には改正前後の様式の書類が混在しています。また、年別の「有効でない」率は提出月の構成がそろわず、増減のトレンドとしては読めないため本稿では扱っていません。

金融庁「第一号様式(内部統制報告書)」(提出書類様式)/金融庁「内部統制府令ガイドライン」(令和5年6月)

分かること:記載上の注意⑻a〜d と⑼a・⑼b の全文。⑻cの文言は令和5年6月のガイドライン4-5が「第1号様式記載上の注意(8)のc」として同じ文言を引いており、2023年改正をまたいで⑻cの内容が変わっていないことは確認できました(確認日2026-08-26)。同4-5は是正の方針・計画の併記を認めています(拘束力=ガイドライン)。

⚠️ 確認できていないこと:参照した様式PDFはファイル作成日が2011年のもので、⑼には a・b しかありません。改正後の様式の全文(とくに⑼cの有無と文言)は、いまも未確認です。

e-Gov法令検索「財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令」(平成19年内閣府令第62号・2026-08-26時点の現行有効版)

分かること:第1条第5項(企業会計審議会の基準が「一般に公正妥当と認められる…評価の基準」に該当する旨)、第4条第1項第1号(内国会社=第一号様式)、第11条の2第3項、第6条第7項。

分からないこと:様式は条文本文ではなく別添PDFのため、条文テキストからは⑼cを確認できません

企業会計審議会「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに実施基準の改訂について(意見書)」(2023年4月7日)

分かること:基準 II.3(5)、実施基準 II.3(5)①、実施基準 II.2(2)。本文で引いた3箇所はいずれも原文で確認(確認日2026-08-26)。適用は2024年4月1日以後開始する事業年度から。

確認できていないこと(本稿の限界)

数え方:母集団=内部統制報告書(通常・書類種別235・XBRLあり)11,621件、提出2023-08-17〜2026-08-16、書類ベース(同一社の複数年度分を含む。「有効でない」125件のユニーク提出者は114社)。文字数=「評価結果」項テキストブロックのHTMLタグ除去後(空白除去の有無を併記)。判定・文字数・語の出現は、すべて筆者がXBRLから全件抽出して集計。データ基準日 2026-08-16。


内部統制・内部監査の支援を見る

公認会計士(登録番号22698)。日本暗号資産取引業協会(JVCEA)の設立時から関与し、新規暗号資産・交換業者の審査、統一経理基準および財務健全性指数の策定に携わった(いずれも当時)。本稿で用いるのは公表資料のみ。