AIに公開草案の変更点を聞きました。「変えない」提案に、意見を出しますか
【問い】社内の説明資料に「ステーブルコインの裏付け資産のルールが変わる」と書いてある。もう変わったのか、これから変わるのか、自社に何が効くのか。決裁する側が原文で確かめようとすると、法令・内閣府令・公開草案がひとまとまりに見えて、どこから開けばいいのかが分からない。締切までに、自社に効く提案を特定して、意見を出すかどうかを決めたい。
【この記事で答えること】AIに、現行の実務対応報告第45号と公開草案第74号を条項単位で並べるよう頼み(資料なしでは拒否)、次に実務者の聞き方で変更点を聞きました(3条件・2026年8月26日実行)。その出力のどこで法令と会計提案の層が混ざったかを示します。あわせて一次資料(改正資金決済法・改正内閣府令・ASBJ公開草案3本)に当たり、確定した層(法令)と未確定の層(会計提案)を分けます。
【答え】裏付け資産を要求払預貯金だけから広げるルールは、公開草案ではなく2026年6月1日に施行済みの法令です(改正資金決済法・改正内閣府令)。未確定なのは会計のほうで、企業会計基準委員会(ASBJ)が2026年8月17日に公表した公開草案3本の中心の提案は、第3号電子決済手段の会計上の取扱いを「変更しない」こと。外国信託型の第4号(取引業者への預託分に限る)を適用範囲と連結キャッシュ・フロー計算書の「現金」に加えることも提案されています。「変更しない」こと自体が質問1として意見募集にかかっており、コメント締切は2026年10月19日(月)。実務者の聞き方で聞いた条件Bの出力で壊れたのは、層の混同・完了形化・「変更しない」の脱落・ただし書きの脱落の4つで、大部分はプロンプトの型で防げるものでした。コメント提出は任意です。出すかどうかを決めるのは経営層で、自社保有分の判定表を作り、草案の質問1〜4を原文で読んでから決める——それが締切から逆算した手順です。
ステーブルコインの会計処理について、AIが下書きした説明資料が回ってきたとします。裏付け資産は要求払預貯金だけでなく、信託財産の50%を上限に国債や定期預貯金でも運用できるようになった。外国信託型という区分が内閣府令にある。どちらも一次資料にあり、50%という数字も条文の「要求払預貯金が50%以上」の裏返しとして読めます。——押しますか。
この資料は仮定ですが、中身は実際の出力です。条件Bで聞いたのは「会計処理はどう変わりますか」でした。返ってきたのは、6月1日に施行済みの法令の話でした。完了形で書かれ、未確定を示す語は1つも付いていない。そして公開草案の中心——信託型(第3号)の会計上の取扱いを「変更しない」という提案——は、1行もありません。読むと逆の印象になる。資料の中で確かめられることは合っていて、合っていないのは「どの層の話か」——それは資料の中では確かめられません。意見の締切は10月19日。社内の説明資料が施行済みと未確定を分けて書けているかを、確かめる回です。
⚠️ この回に、EDINET実測は使っていません。 根拠は法令・内閣府令・公開草案の原文と金融庁の公表ページで、それぞれの拘束力を本文と末尾に明記します。
AIにやらせてみた
⚠️ 実行日 2026-08-26。この節のモデル名・仕様はこの日時点のものです。出力はすべて、この記事の下書きに使ったAI(Claude Opus 5・Claude Code経由)と比較用の別モデルで実際に実行した結果です。
条件A:資料を与えず、厳しい形式を指定する
ASBJの告知ページだけを与えて、こう頼みました(プロンプト全文)。
現行の実務対応報告第45号と、実務対応報告公開草案第74号を、条項単位で
『現行』『提案(未確定)』の2列に分けた表にしてください。
混ざった行(現行と提案の区別がつかない行)は失格とします。
分からない項目は『不明』と書いてください。
【AIの出力例】 表を作らず、「詳細な条項比較にはPDFの内容が必要です」と拒否しました。
採否:拒否自体は正しい判断です。資料が無いのに表を作られるより、はるかに良い。ただし拒否文の中で「第3号電子決済手段の裏付け資産管理要件の変更(要求払預貯金から最大50%まで国債等・定期預貯金での運用を認める)」と説明を添え、それが法令側で確定済みか会計側で未確定かの別を付けませんでした。断りながら、層は混ぜている。
条件B:同じページを、実務者の聞き方で聞く
経理担当者が実際に打ちそうな聞き方に変えました(プロンプト全文)。
この公開草案によって、ステーブルコイン(第3号電子決済手段)の会計処理は
どう変わりますか。変更点を箇条書きで具体的に教えてください。
また、電子決済手段を保有している会社の経理担当者が、
2026年10月19日までに対応すべきことを教えてください。
【AIの出力例】(抜粋・原文のまま)
1. 裏付け資産管理の柔軟化 従来:全額を要求払預貯金で管理/変更:信託財産総額の50%まで…新たに認められた
2. 会計上の性格の再検討
3. 外国信託型電子決済手段への対応…新たに規定された
採否:不採用。壊れた箇所は4つです。
- 「会計処理はどう変わるか」という問いに、法令(施行済み)の変更を第1項目として答えた。層の取り違えです。
- 「認められた」「規定された」と完了形で書き、「こう提案されている」という未確定ラベルが1つも付かなかった。
- 草案の中心である「第3号の会計上の取扱いを変更しない」という提案が完全に脱落し、読むと逆の印象になる。
- 実際の会計上の改正提案(外国信託型第4号を適用範囲と現金に加える。いずれも預託分に限る)が、法令の話に吸収されて消えた。
条件C:資料なし・別モデル
比較のため、別モデル(gpt-5.6-sol・codex CLI経由・推論high)に条件Aと同じ2列表を資料なしで依頼したところ、2回とも出力ゼロで正常終了し、比較対象を取得できませんでした。ただし構造上の論点は残ります。公開草案の公表は2026年8月17日で、多くのモデルの知識はそれより前で止まっています。資料を与えない限り、モデルは第74号の存在自体を知らないまま答えることになります。
人が直すこと
条件Bの壊れ方は、プロンプトで大部分を防げます。指示側で立てられる歯止めは4点です。
- (a) 出力の各行に「法令/会計基準案」の層タグを強制する
- (b) 「変更しない」という提案も、変更点の1行として立てさせる
- (c) 適用範囲のただし書き(預託分に限る等)を必ず1列にする
- (d) 完了形を全部「〜と提案されている」に置換する
では、層を分けると実際はどうなっているのか。ここからが本題です。
【確認できる事実】層を分けて読むと、こうなっている
層1:法令——裏付け資産のルールは、もう変わっている(施行済み)
まず確定している側です。拘束力:法律・内閣府令。
資金決済法の改正(令和7年法律第66号)は2026年6月1日に施行されました(関係政令は2026年5月22日公布)。裏付け資産の運用範囲を具体化する「電子決済手段等取引業者に関する内閣府令」の改正(令和8年内閣府令第47号)も、2026年5月19日公布・6月1日施行です(パブリックコメントの意見は16件)。
電子決済手段は、資金決済法2条5項で4つに分かれます。
| 号 | 中身 |
|---|---|
| 第1号 | 通貨建資産である財産的価値 |
| 第2号 | 第1号と相互に交換できる財産的価値 |
| 第3号 | 特定信託受益権(信託型ステーブルコイン) |
| 第4号 | 前三号に準ずるものとして内閣府令で定めるもの |
出典:資金決済に関する法律(平成21年法律第59号)第2条第5項(施行日2026年8月12日版・e-Gov法令検索)
第3号の裏付け資産について、法2条9項は「預貯金で管理する額の割合を内閣府令で定める割合以上とし、残額を内閣府令で定める国債証券等で運用する」という建て付けです。その内閣府令(取引業府令3条)が円建てに課す構造は——
- イ(1) いつでも払戻しを請求できる預貯金(要求払預貯金)
- イ(2) 元本欠損のおそれがなく、いつでも解約できる定期預貯金
- イ(3) 円建ての国債証券(取得から償還までが3か月を超えないもの。3条2項1号)
- ロ イ(1)の要求払預貯金が、信託財産総額の50%以上(「百分の五十」=3条1項)
- ハ 国債で運用する場合にだけかかる要件:(1)信託財産の元本の評価額が履行等金額の合計を下回ったら、その翌日から起算して2営業日以内に委託者が不足額を解消する/(2)受託者が元本の評価額を時価により算定する
外貨建ても同旨です(3条3項2号。国債証券は外国発行債券)。
出典:電子決済手段等取引業者に関する内閣府令(令和5年内閣府令第48号)第3条(施行日2026年6月1日版・e-Gov法令検索)
⭐ 言葉の精度を1つ。「50%を上限に国債等・定期預貯金を認める」という要約(ASBJの公表資料の表現)は、条文では「要求払預貯金が50%以上」の裏返しです。50%の枠に数えるのは要求払預貯金だけで、定期預貯金も国債と同じ“残り側”に入ります。
第4号の中身は取引業府令2条3項に2つあります。1号=外国信託型(外国当局の監督下で登録等を受けた者が発行/償還原資の管理状況について現地の公認会計士相当の資格者・監査法人相当の者による監査を受けている/犯罪利用の疑い時の取引停止措置/信託財産と同一通貨建て、の4要件)と、2号=金融庁長官が定めるもの(告示の有無・内容は未確認。末尾参照)。今回の公開草案が扱うのは1号だけです。
層2:会計——公開草案は「変えない」を含む4つの提案(未確定)
次に、未確定の側です。拘束力:公開草案=確定していません。「こうなる」ではなく「こう提案されている」の層です。
ASBJは2026年8月10日の第582回委員会で公表を承認し、2026年8月17日に3本を公表しました。
| 文書 | 何の改正案か |
|---|---|
| 実務対応報告公開草案第74号 | 実務対応報告第45号(電子決済手段の会計処理・開示の当面の取扱い)の改正案 |
| 企業会計基準公開草案第99号 | 連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準の一部改正(企業会計基準第32号)の改正案 |
| 移管指針公開草案第21号 | 移管指針第6号(キャッシュ・フロー計算書の実務指針)の改正案 |
コメント締切は2026年10月19日(月)。電子メールで提出し、氏名・名称のないコメントは無効、原則として公開されます。提案の柱は4つです。
- 質問1:第3号の会計上の取扱いを変更しない(BC4-2・BC13)。法令で運用範囲が広がった後も、保有者側は券面額のまま(取得時=第5項・移転/払戻時=第6項・期末時=第7項)動かさない、という提案です。
- 質問2:外国信託型第4号を適用範囲に加え、第1〜3号と同様の会計処理・開示を行う(第2項・第4項(6)・BC13-2・BC17)。
- 質問3:外国信託型第4号を連結キャッシュ・フロー計算書の「現金」に含める(第99号案第3項・BC6-2、第21号案第2項)。第3号は引き続き現金です。
- 質問4:適用時期は公表日以後とし、経過的な取扱いを定めない(第74号案第15-2項・BC47。第99号案・第21号案も同様)。
⭐ 質問2・3には、見落とすと判定を誤るただし書きがあります。外国電子決済手段と外国信託型第4号が範囲に入るのは「電子決済手段の利用者が電子決済手段等取引業者に預託しているものに限る」(第74号案第2項ただし書き)。自己保管分は範囲外です。BC8は、預託されていないものは会計上の性格が「必ずしも明らかではない」ためと説明しています。
注記は企業会計基準第10号第40-2項に定める事項とされ(第14項)、BC45は「時価等は預金に関する取扱いに準ずる」「払戻義務は金銭債務に関する取扱いに従う」と例示します(⚠️第40-2項の本文は未確認・末尾参照)。
範囲の外側も1つ。第3号の発行者側の会計処理・開示は、この実務対応報告の対象外です(第3項。実務対応報告第23号Q8のAの一般的な取扱いによる旨がBC6に。⚠️Q8のA本文は未確認)。「発行体の期末評価がこの草案で変わる」という読みは、対象の取り違えです。
出典:企業会計基準委員会 実務対応報告公開草案第74号・企業会計基準公開草案第99号・移管指針公開草案第21号および公表文(いずれも2026年8月17日・asb-j.jp。PDF原文を確認)
層3:この提案がいま効く経路は、何本あるか
この回で唯一「数えた事実」を出します。ただしEDINETではなく、金融庁の登録一覧です。
【観察】 金融庁「電子決済手段等取引業者登録一覧」(令和8年8月27日現在)に載っている登録業者は、全業者数:2です(⚠️公開直前に同一覧を取り直した値。執筆時点の令和8年6月24日現在は1者で、2026年8月27日に1者が加わりました)。
【推察】 質問2・3は「取引業者への預託分に限る」という条件付きでした。登録を受けた業者が基準日時点で2者という観察から言えるのは、この提案が実務に効く経路は、いまの時点では太くない可能性がある——ここまでです。⚠️この一覧は「登録」を受けた業者の一覧です。銀行等・資金移動業者など、登録以外の経路で電子決済手段等関連業務を行う主体がこの数に入るかは本稿では確認していません(末尾参照)。したがって「預託の受け皿になり得る主体は全部で2者」とは読めません。登録は今後増減し得ますし、締切後に草案自体も変わり得ます(誤読つぶしの節も参照)。
なお同一覧には「金融庁・財務局が、これらの電子決済手段の価値を保証したり、推奨するものではありません」という注意書きが付されています。
出所:金融庁「電子決済手段等取引業者登録一覧」(令和8年8月27日現在)
会計側から見ると、確認の重心は3か所にある
1つ目:適用範囲を分けるのは「号数」と「預託の有無」の2軸。 同じ外国信託型第4号でも、取引業者に預託していれば範囲内、自己保管なら範囲外です(第2項ただし書き)。台帳に「どこに預託しているか」の列が無いと、会計の適用判定ができません。
2つ目:信託側には、法令が時価管理を課している。 保有者の会計は券面額のまま「変更しない」と提案される一方、国債で運用する信託には受託者による時価での元本評価と2営業日以内の不足額解消が法令として課されています(府令3条3項1号ハ)。会計は動かさず、裏付けの管理は法令側が締める二層構造です。⚠️この要件は国債で運用する場合にだけかかります。すべての第3号に一般化しないでください。
3つ目:外国信託型は、現地の監査が制度の入口に組み込まれている。 償還原資の管理状況の検証は、会計基準ではなく登録要件の側に置かれています(府令2条3項1号ロ)。
AIに任せる工程/人が判断する工程
この回の実務は「10月19日までに、自社に効く提案を特定する」です。工程を分けるとこうなります。
| 工程 | 任せられるか |
|---|---|
| 一次資料の収集(公表日・締切・PDF・条番号の一覧化) | ⭕ 任せられる(⚠️URLと日付は人が原文で照合) |
| 条項単位の「現行/提案(未確定)」2列表の下書き | △ 原文PDFを渡し、層タグ・ただし書き列・「〜と提案されている」への置換を強制すれば出る |
| 記述の層の確定(法令か会計か、施行済みか未確定か) | ❌ 人が原文で確定する(条件A・BのとおりAIは系統的に混ぜる) |
| 自社保有分の号数・預託先の判定 | 下調べは⭕、確定は人(経理責任者) |
| コメント提出の要否・文面の決定 | ❌ 会社が決める(提出は義務ではありません) |
⭐ AIが効くのは「見るべきものを絞る」工程です。3本のPDFと2本の法令から自社に関係する条項の候補を絞るまでは速い。絞られた候補が正しい層に置かれているかの確定は、原文を開ける人の仕事です。
AIを使うなら、その使い方自体が統制対象になります
条件A・Bで見たとおり、この論点でのAIの壊れ方は再現性のある型(層の混同・完了形化・「変更しない」の脱落・ただし書きの脱落)を持っています。だから対策もプロンプトの型として残せます——残すなら、ですが。
- 層タグを強制するプロンプトを、担当者の手元ではなく共有の版管理に置く
- モデルが更新されたら、同じプロンプトで出力が変わっていないかを確認する
- 出力の確認日と、誰が原文と照合して承認したかを記録する
確定/未確定の混同は、社内資料に一度入ると引用のたびに増殖します。入口で止める統制のほうが、後から回収するより安くつきます。
⚠️ この数字を、こう読まないでほしい
「AIが2列表を出力できた」=「自社の適用判定が済んだ」ではありません。 表は条文の整理であって、自社の保有形態(号数・預託の有無)を当てはめる判定は別の工程です。
「登録業者が2者」=「自社に関係ない」でもありません。 第1〜3号には現行の実務対応報告第45号がすでに適用されています。2者という観察が言えるのは「外国信託型の追加提案が効く経路が現時点で細い」ことまでです。しかも適用時期の提案は公表日以後・経過措置なし。確定すれば猶予をあてにできない建て付けが提案されています。
「変更しない」=「何も起きない」でもありません。 「変更しない」こと自体が質問1として意見募集にかかっています。締切までは、この提案も含めて変わり得ます。本稿の記述はすべて2026年8月26日時点の草案の内容です。
【私の提案】締切から逆算して、判定表を1枚作る
対象:電子決済手段を保有・受領している会社の管理部(⚠️第3号の発行者側の会計はこの草案の対象外です)
条件:自社が使う電子決済手段の発行スキームが公開情報で確認できること
| いつ | 何をするか |
|---|---|
| 翌日 | 「今日の一歩」の○×表(号数/預託/約款の移転確定時期)を作る |
| 7日目 | 草案の質問1〜4を原文で読み、○×表と突き合わせて「自社に効く質問」を特定する |
| 14日目 | コメント提出の要否を決める(提出は任意。メール提出・氏名等が必要・原則公開) |
| 10月19日まで | 提出するなら文面を確定して提出。しないなら、確定後に取扱いを再確認する担当と期日を決めておく |
承認者:判定表の確定は経理責任者。コメント提出の要否と文面はCFO等の経営層。
成果物:自社保有分の判定○×表/自社に効く質問の一覧/(提出する場合)コメント文面。
⚠️ 法令上の義務と、私が勧める手順は別物です。 コメント提出も判定表の作成も、義務ではありません。
経営に効く一節
この記事が動かすのは、リスクです。
このテーマでは、施行済みの法令と未確定の会計提案が同居しています。そしてAIに聞くと、その2つは高い確率で混ざって返ってくる——完了形で、「変更しない」という中心の提案を落として。混ざったままの1枚が経営会議に上がれば、確定していないことを前提にした判断が始まります。
経営として問うべきは「草案にどう対応すべきか」の前に、いま社内で回っている説明資料が、施行済みと未確定を分けて書けているかです。締切は10月19日。それまでに分けて読み直す機会が、制度の側から用意されています。
人が判断・承認する箇所
- 自社保有分の号数・預託先の判定の確定:経理責任者(AIの下調べを原文と照合したうえで)
- コメント提出の要否と文面:CFO等の経営層(任意の行為であることを前提に)
- AIに作らせる比較表のプロンプトと出力の承認:経理責任者+作成者以外の1名(層タグ・ただし書き・未確定表現の3点を確認)
今日の一歩
自社が保有・受領する電子決済手段について、公開情報だけで次の3列の○×表を作ってください。15分で終わります。
| 確認する列 | ×だったときの意味 |
|---|---|
| ① 第1〜4号のどれに当たるか | 号数が分からない=適用判定の入口に立てていない |
| ② 電子決済手段等取引業者に預託しているか | ×(自己保管等)なら、外国分を範囲に加える今回の提案は自社保有分に効かない(第74号案第2項ただし書き) |
| ③ 利用約款に移転の確定時期が書かれているか | ×なら受渡日基準の前提が立たない(第74号案BC16は、事務ガイドラインが求める「契約書や利用約款等において移転の手続きや移転の確定する時期及びその根拠を記載」を会計処理の前提に挙げています) |
この1枚があると、7日目の「草案原文との突き合わせ」が機械的に進みます。
次に必要になる仕組み
判定表の先にあるのは、期末ごとの実務です。保有する電子決済手段・暗号資産の残高照合、期末評価、注記の整備——「一度判定して終わり」ではなく、決算のたびに回る工程になります。その設計を会計士の関与のもとで整えたい会社に向けたサービスを用意しています。
詳細は、下記からご確認いただけます。
参照した資料と、確認できていないこと
企業会計基準委員会 実務対応報告公開草案第74号(実務対応報告第45号の改正案)「資金決済法における特定の電子決済手段の会計処理及び開示に関する当面の取扱い(案)」(2026年8月17日)(拘束力:公開草案=未確定)
分かること:質問1〜4の提案内容、預託分に限るただし書き、券面額基準の維持、発行者側の対象外、適用時期の提案。
https://www.asb-j.jp/jp/project/exposure_draft/y2026/2026-0817.html
企業会計基準委員会 企業会計基準公開草案第99号「『連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準』の一部改正(案)」・移管指針公開草案第21号(いずれも2026年8月17日)(拘束力:公開草案=未確定)
分かること:外国信託型第4号(預託分に限る)を「現金」に含める提案。
企業会計基準委員会「実務対応報告公開草案第74号…等の公表」(2026年8月17日)
分かること:公表の経緯(2026年8月10日第582回委員会で承認)、コメント締切(2026年10月19日)、提出方法。
資金決済に関する法律(平成21年法律第59号)第2条(施行日2026年8月12日版・e-Gov法令検索)(拘束力:法律)
分かること:電子決済手段の第1〜4号の定義、特定信託受益権の裏付け資産の建て付け(2条9項)。
https://laws.e-gov.go.jp/law/421AC0000000059
電子決済手段等取引業者に関する内閣府令(令和5年内閣府令第48号)第2条第3項・第3条(施行日2026年6月1日版・e-Gov法令検索)(拘束力:内閣府令)
分かること:50%要件の構造、3か月以内償還の国債、時価評価と2営業日以内の不足額解消、外国信託型の4要件。
https://laws.e-gov.go.jp/law/505M60000002048
金融庁「『電子決済手段等取引業者に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令』等の公布及びパブリックコメントの結果等について」(2026年5月19日)/金融庁「令和7年資金決済法改正に係る政令の公布及びパブリックコメントの結果等について」(2026年5月22日)
分かること:改正府令の公布・施行日、パブリックコメント意見16件、改正法の施行日。
出所:金融庁「電子決済手段等取引業者登録一覧」(令和8年8月27日現在)
分かること:登録業者の数(全業者数2)。
確認できていないこと(本稿の限界)
- 企業会計基準第10号第40-2項の本文:未確認。注記の中身はBC45の記述までしか書いていません。
- 実務対応報告第23号Q8のAの本文:未確認。第3号の発行者側の一般的な取扱いの中身には踏み込んでいません。
- 金融庁 事務ガイドライン第三分冊「17 電子決済手段等取引業者関係」の原文(拘束力:監督指針・ガイドライン):未確認。本稿の引用は第74号案BC16経由の孫引きです。
- 取引業府令2条3項2号「金融庁長官が定めるもの」の告示の有無・内容:未確認。本稿が「第4号=外国信託型」と言い切らないのはこのためです。
- 銀行等・資金移動業者が電子決済手段等関連業務を行う場合に、金融庁「電子決済手段等取引業者登録一覧」に載るかどうか:未確認。本稿の「全業者数:2」はこの一覧に載っている登録業者の数であって、預託の受け皿になり得る主体の全数ではありません。
- 府令3条3項1号ハ(1)の「委託者」が具体的に誰を指すか(利用者か、発行スキームの運営者か):条文だけでは確定できませんでした。
- 本稿の草案に関する記述は2026年8月26日時点のものです。締切(2026年10月19日)以降にお読みの場合は、確定・修正の有無を必ず確かめてください。
数え方:登録業者数=金融庁「電子決済手段等取引業者登録一覧」(令和8年8月27日現在)の全業者数。本稿にEDINET実測は使っていません。
公認会計士(登録番号22698)。日本暗号資産取引業協会(JVCEA)の設立時から関与し、新規暗号資産・交換業者の審査、統一経理基準および財務健全性指数の策定に携わった(いずれも当時)。本稿で用いるのは公表資料のみ。